2012年3月アーカイブ
交通事故の被害者になりました。その後、破産することになったのですが、加害者(保険会社)からもらうことになる治療費や慰謝料、後遺症による逸失利益などの損害賠償は、破産すると、もらえなくなってしまうのですか?
見解
損害の項目に分けて考える必要があります。
1.治療費
- 破産してももらえます。
- 理由:破産法は、破産しても失わない財産について次のように定めています。
破産法第34条4項(抜粋)
「裁判所は、破産者の生活の状況、財産の種類及び額、収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産(=破産しても失わない財産)の範囲を拡張することができる。」
治療費は、身体の治療にかかる費用であり、また、保険会社は直接医療機関に支払うことから、破産しても失わない財産と考えられます。
2.介護費用や入院雑費
- 破産してももらえると考えられます。
- 理由:被害者の治療に直接関わるものですから、上記の破産法第34条4項「財産の種類を考慮して」、破産しても失わない財産と考えられます。
3.休業補償(=会社を休んで収入が減った損害の賠償)
- 破産してももらえるかはケース毎に個別に判断されます。
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理由:交通事故がなければ、会社を休まずに収入があったのですが、その収入の余剰分は破産すると失う可能性があったわけです。その分に相当する休業補償額などは破産すると失う可能性があります。
もっとも、交通事故被害者の救済という見地から、上記の破産法第34条4項「破産者の生活の状況、財産の種類及び額、収入を得る見込み」をケース毎に考慮して、破産しても失わないことにするか判断されることになります。
4.逸失利益(=後遺障害によって労働能力が喪失した分の損害の賠償)
- 破産してももらえるかはケース毎に個別に判断されます。
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理由:交通事故がなければ、労働能力を喪失せずに本来の収入があったのですが、その収入の余剰分は破産すると失う可能性があったわけです。その分に相当する逸失利益額などは破産すると失う可能性があります。
もっとも、交通事故被害者の救済という見地から、上記の破産法第34条4項「破産者の生活の状況、財産の種類及び額、収入を得る見込み」をケース毎に考慮して、破産しても失わないことにするか判断されることになります。
5.慰謝料
- 破産手続が終わるまでに、被害者・加害者間で慰謝料額が合意された場合や、裁判によって判決が言い渡された場合は、破産すると失うと考えられます。
- 理由:破産法は、破産しても失わない財産について次のようにも定めています。
破産法第34条3項(抜粋)
「次に掲げる財産は、破産財団に属しない(=破産しても失わない)。
差し押さえることができない財産。ただし、破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。」
慰謝料請求するか否かは、もっぱら被害者自身の意思によります(行使上の一身専属性)ので、慰謝料請求権は、本来差し押さえることができないものです。したがって、本来、上記の破産法第34条3項によって、破産しても失いません。
しかし、被害者・加害者間で慰謝料額が合意された場合や、裁判によって判決が言い渡された場合は、請求することも金額ももはや確定しているため、慰謝料請求権は一身専属性が失われ、差し押さえることができるようになったもの(上記条文の但し書)になり、破産すると失うことになります。
もっとも、破産者の生活の状況等によっては、破産法第34条4項によって、慰謝料も破産しても失わないと判断されるケースもありうると考えられます。
破産免責で解決
-
破産免責によって借金をゼロにしました。
ただし、娘夫婦の家は最終的に手放すことになりました。
ご相談前 | ご依頼後 | |
---|---|---|
借入残高 | 借入残高 約2800万円 | 0円 |
月返済額 | 月返済額 約9万円 | 0円 |
深田法律事務所の解決への道筋
夫がすでに自己破産していますが、法律上は破産しても養育費の請求はできます。しかし、夫にはほとんど収入がなく、実際に養育費をもらうことは困難な状況でした。ご依頼者様と家計の状況を話し合い、住宅ローンの支払いを続けることは難しいことから、住宅の維持はあきらめ、破産申立をし、免責によって借金はゼロになりました。
このような場合もすぐに自宅から退去しなければならないわけではなく、住宅ローン会社と退去時期や退去方法について話し合いをしました。
破産免責で解決
- 破産免責によって借金を0円にしました。
ご相談前 | ご依頼後 | |
---|---|---|
借入残高 | 約300万円(金利29.2%など) | 0円(金利0%) |
月返済額 | 約10万円 | 0円 |
深田法律事務所の解決への道筋
利息制限法によっても借金があまり減らず、収支の状況から破産申立をすることになりました。その結果、破産免責を得、借金は0円になりました。
約80万円で購入した中古車のローンはすでに終わっており、年式も6年以上前のものであったため、破産をしても失わずに済みました、
車を失わずに済んだので、仕事が続けることができると喜んでいただけて、大変よかったと思いました。
破産にはルールがあり、破産すると失う財産、失わずに済む財産があります。ご不安な場合は、ぜひご相談ください。
破産免責で解決
- 破産免責によって借金が0円になりました。
ご相談前 | ご依頼後 | |
---|---|---|
借入残高 | 約350万円(金利29.2%など) | 0円(金利0%) |
月返済額 | 約10万円 | 0円 |
深田法律事務所の解決への道筋
利息制限法によって金利を下げて再計算をしても、200万円を超える借金が残り、現在の収入では支払いが困難でした。
そのため、破産申立をすることになりました。
特に破産によって失うかどうかを検討する必要のある財産はなかったため、その点は問題がありませんでした。
しかし、借金の原因が、飲食やエステ、ギャンブルという、免責不許可事由の「浪費」にあたるため、破産管財人が選任され、数ヶ月の間、家計簿をつけるなどの収支のチェックがなされました。
依頼者の方と、2度と浪費にあたるような支出はしないよう、よく話し合いました。
最終的には、今後はこのような支出は控えるという誓約の下、裁判所によって裁量による破産免責が得ることができました。
破産免責によって解決
- 借金が0円になりました。
- 過払い金60万円が返ってきました。
ご相談前 | ご依頼後 | |
---|---|---|
借入残高 | 約400万円(金利29.2%) | 0円 |
月返済額 | 約11万円 | 0円 |
深田法律事務所の解決への道筋
借入のあった消費者金融会社から過払い金60万円を取り返しました。
しかし、他社からの借入額が250万円ほど残っており、返済が困難だったため、破産免責により借金をゼロにしました。
過払い金60万円は、成功報酬の12万6000円、裁判所に支払う破産手続費用約15万円(管財費用含む)を控除した約32万円をご本人様にお返しできました(破産をしても、原則として総額99万円までの財産はご本人様に残せます)。
破産免責によって解決
- 借金残高は0円になりました。
ご相談前 | ご依頼後 | |
---|---|---|
借入残高 | 約700万円 | 0円 |
月返済額 | 約20万円 | 0円 |
完済までの期間 0年
深田法律事務所の解決への道筋
もう支払いができる状況ではありませんでしたので、すぐに支払いをストップしました。
その後、利息制限法で引き直し計算をしましたが、それでも借金額が多く残りました。
ご本人様は、何とか支払っていくことはできないだろうかと仰っていました。しかし、ご収入など家計の状況を計算すると、支払っていくのはとても生活を圧迫し、また、支払い終わるのも困難でした。
そこで、ご本人様とこのようなシミュレーションをして、よく話し合い、破産申立てをすることになりました。
その結果、破産免責により借金がなくなりました。
「今では、嘘のように落ち着いた生活を送っています。」と本当に安堵した表情で仰っていました。
破産とは、借金を帳消しにする制度です。その代わり、生活に必要な財産以外の財産は無くなることになります。
Q.破産すると、財産全てが無くなってしまうの? も合わせてご参照ください。
自己破産以外の借金の解決方法(任意整理、個人再生など)もあります。それぞれの解決方法のメリットとデメリットをよく理解した上で選択する必要があります。
自己破産のメリットは、やはり借金を帳消しにできる点です。他方、自己破産のデメリットは、一般に考えられているほどではないことが多いです。
弁護士に相談して、もっとも良い解決方法を選択することが重要です。
Q.破産のメリット・デメリットは? も合わせてご参照ください。
多くの場合は知られません。
しかし、以下の場合などには、知られることがあります。
家族や友人、勤務先からもお金を借りている場合:裁判所から通知が届くため、知られてしまいます。
光熱費の支払い口座の通帳が自分名義でない場合:裁判所に提出しなければならず、家族に知られてしまいます。
正社員で3年以上勤務している場合:退職したらいくら退職金が出るのかを書面で明らかにする必要があり(もちろん退職する必要はありません)、その過程で勤務先に知られる可能性があります。対処について弁護士と十分検討する必要があります。
破産管財人が付いて、管財人の調査が家族に及ぶ場合:あまり多くはありませんが、このような場合が予想されるとき、対処について弁護士と十分検討する必要があります。
自動車をローンで購入し、まだローンが残っている場合は、原則として自動車を失います(ローン契約書において、完済時まで「所有権を留保」されているか否かによります)。
ローンが残っていない自動車については、その自動車の時価によって失わずに済むかどうかが決まります。時価が20万円以下の場合は失わずに済みます。また、初年度登録が6年以上前であれば失わずに済むことが多いです。時価が20万円を超えて99万円以内であれば、その他に手元に残す財産の価額によりますが、自動車も残すことが可能です。
解約返戻金とその他のもっている財産の総額が99万円を超えなければ、生命保険は失わずにすみます。
持ち家は任意売却されるか競売にかけられることになります。
しかし、すぐに家から追い出されるわけではなく、新しい買主が現れるまでは住み続けることができます。
なお、 住宅ローンを支払い続けながら借金を整理したい場合は、個人再生の選択を検討することになります。
日常生活に必要な家財道具や日用品などは、破産しても失いません。
ただし、特に高額な家財道具(新品の大型プラズマテレビなど)は、必ずしも日常生活に必要なものとはいえず、失う場合があります。
①退職がまだ先の場合
仮に今すぐ退職したら退職金がいくら出るのかを会社で試算してもらい、その額の8分の1に相当する額の財産として評価します。
例えば、仮に今すぐ退職した場合、退職金試算額が400万円の場合、400万円×1/8=50万円の財産も破産時に持っていると評価します。
そして、破産しても失わない財産の総額は原則99万円までですから(→破産しても失わない財産へ)、その他の財産と合わせて、総額99万円を超えなければ、退職金は失いません。
仮に総財産が99万円を超える場合は、超えた金額に満つるまで毎月積立てをして、その積立金を債権者に配当することにより、退職金を守るのが一般的です。例えば、退職金試算額が1600万円の場合は、1600万円×1/8=200万円の評価となり、他に査定額10万円の車があるような場合、200万円+10万円-99万円=111万円を積立てて、その積立てた111万円を債権者に配当することにより、退職金と車を守ることができます。
要は、破産しても失わない財産は原則として総額99万円まで、そのうち退職金の評価は8分の1とするいうことです。
*なぜ、退職金の評価は8分の1なのか?
細かい話になりますが、次のQにあるとおり、退職金は生活の糧となるものなので、法律上4分の3は守られています(4分の3は、債権者は強制執行により差し押さえることができません)。
ですので、破産して債権者への配当に充てられるのは、退職金については、法律で守られない4分の1だけのはずです。
しかし、当然のことながら、退職金というのは本人が退職しない限り出ません。そういう意味で、債権者としては退職金から債権回収するのは困難です。
そこで、回収困難な点を考慮して、退職金については、破産実務上、その評価額を4分の1のさらに半分の8分の1としています。
②退職間近の場合
退職金は生活の糧となるものなので、法律上4分の3は守られています。そこで、退職金の4分の1は失い、債権者への配当に充てられます。
③すでに退職金が支給されている場合
退職金がすでに支給されて、現金や預貯金となっている場合は、それはもはや退職金ではなく、現金や預貯金として扱われます。
ですので、上記①や②のような8分の1や4分の1といった評価ではなく、金額のまま評価されます。
破産しても失わない財産の総額は原則99万円までですので、総財産99万円を超える分は失い、債権者への配当に充てられることになります。